第1章 *くるぶし*
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『え、今日…ですか…』
うん今日!と、噓偽りのない笑顔でそう言う尾口先生。私は連絡事項のあと、職員室に呼び出され案の定、今日決まってしまった体育祭の実行委員の話だった。
今日の放課後、体育祭用のポスターを作り始めてほしいという話だった。勿論私は了承した。
どうせ家に帰っても、やることはないから暇だし、今日は月曜日だから生意気な弟に漫画雑誌を買ってこいとパシられるだけだ。
それに、細かい作業をするのは結構好きだから。
尾口先生に受け取った、何枚かのプリントと多目的室の鍵を抱えて、職員室をあとにした。
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がちゃ、
多目的室の鍵をあけて、少し蒸し暑い室内をすぐに冷房で涼める。ぶおん、ぶおん、とクーラーがよく効く場所に腰掛け、早速どんなポスターを作ろうかと頭を悩ませる。
うーん、やっぱり体育祭だから、迫力があるポスターがいいよね……
真っ白なプリントに、頭の中のイメージをそのまま描いてみる。完成したそれを見て思い出した、私に画力なんか存在してなかったんだ……
『……これは酷い…文字だけっていうのもありかな』
そうしよう!と始めようとまた始めようとシャーペンを握ると、突然後ろのドアが開く音がした。
私は目を丸くする。そこにいたのは、噂の玉森くんだったから。思いがけない来客に私はシャーペンを落としそうになる。
どうもー、と言いながら私の斜め前に座る玉森くんに、私は硬直状態になる。そして思い出す、玉森くんも実行委員になったことを。
少し眠たそうな、とろんとした目をした玉森くんはやはり間近で見てみると有紗のいう通りかなりのイケメンだと思った。見惚れてしまっている私を他所に、玉森くんは私のさっき描いたお見苦しい絵を手にとっていた。
やっと我に返った私は、驚きと恥ずかしさに襲われて、すぐにその絵を取り返す。
「わっ、びっくりした…さっきのさんが描いたの?」
びっくりしたのはこっちだ!なんて言えるはずもなく、私は自分でも驚くほどに顔を真っ赤にして頷く。何も言えない、まさか私の絵を見られるとは…恥ずかしすぎる……
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