第1章 *くるぶし*
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いつからだろう、上手く笑えなくなってしまったのは。
記憶を辿ってみると、それはあまりに単純で卑怯なもので、耳を塞ぎたくなるような、そんなものだった。
たまに、こんなことを言う主人公の小説を読む。それは別に共感とか、同情とかそういうことじゃないけれど、案外ありがちなセリフだということが心に残った。
いや、別に私が特別な人間にだとは思っていない。けど、やっぱり普通の人とは感覚がちょっとズレているのかもしれない。けど別にそれは、あまり悲しいとは思わなかった。
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この通学路は、何回歩いただろうか。なんて、朝の通学でこんなことを考える女子高校生がいるだろうか。
この良くも悪くもない平均偏差値の高校に入ったのは一年前。もともと、頭が良かった訳でもないし、私は近場で安定してそうなこの学校を選択した。まぁ、今は何も困ったことは起きていないので良くも悪くもない。
「〜!!おはよ!」
とんっ、と背中を押されたと思えば、幼馴染の有紗の姿が見えた。その堅苦しくない表情に私は朝から安心する。やはり、幼馴染の存在は大きいものだ。
私は朝からハイテンションな有紗に苦笑いで返事を返す。だけど、こうやって朝挨拶をしてくれるのは幼馴染の有紗しかいない。意味はそのままで、私には心ゆるせる友は一人しかいないのだ。
あまり表情を変えない私だけど、有紗はそんなこと昔から当たり前のように話しかけてくれる。私はそんな幼馴染のことをちょっぴり尊敬してたりする。
学校の門を抜け、靴箱で靴を履き替えたところで、私と有紗はわかれる。あろう事か、2年生でクラスが別々になってしまったのだ。
「じゃあね、!また教室迎えに行くから!」
そう言って、有紗は同じ階段を上っていたクラスメイトであろう女子に話しかけていた。
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勿論、こんな私にクラスで友達なんかいるはずもなく、私は誰とも挨拶を交わさずに、一番前の席にバッグを置く。何故、私に限って一番前の席なのだろうか、それだけが嫌な話だ。
やることも別にないので、私は1限目の用意をせっせと始めた。
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