第5章 雄英、調査期間
「うー!! 先生、これ終わりませんよ!!!!!!」
「…黙って手を動かせ」
そういう先生もゲンナリとした様子だ。今日中に終わるとは思っていないらしい。私は頭を抱えながら、手元の書類をまとめて棚に戻した。……この書類の山、前より高くなってない?
「…………ほんの数分の居眠りだけでとんだことになったものだ……」
「何か言ったか?」
「何もありません」
あーあーあー!!!!この山、まさか先生たちの仕業じゃないでしょうね。…そうだよ…!!だって、襲撃後、ここを出入りする人多くなってたもん!!おいおいおい!!!!仮にも先生でしょー!!使ったものは直せぇぇぇ!!!!!!
「うるさいぞ。余計なことを考えるな。手を動かせ手を」
「だって、先生!!これ…終わらないですよ。それに腹立ちませんか!!」
「終わると思えば終わる」
淡々と言う先生だったが、私は見た。資料を大きな音を立てて、ぞんざいに扱っている先生の姿を。先生も十分にはらわた煮えくり返っているようだ。
「………なにがおかしい?」
「いえ」
私は慌てて、資料に顔を埋めた。そんなに顔が緩んでいただろうか。いやでも……これは……
「…………犬猫山。何を震えている?」
「いえ何も」
笑いたくて笑いたくて、震えるー……的な?あ、やばい……本気でツボった!!
「………お前そんな顔も出来たんだな」
ぼそっと呟いた相澤先生の声が私の耳に入った。文字通り震えていた私は、顔を上げ、首をかしげた。
「そんな顔? 私は生まれも育ちもこんな顔ですが?」
「………」
私の言葉に呆れたのか、それともただの独り言だったのか、相澤先生はそれに答えることなく、黙々と作業をしていた。
「…………犬猫山」
しばらく時間がたち、私が終わる気配のない書類の束を頬杖をつきながら見ていると、ふと相澤先生が私の名前を呼んだ。
「はい?」
私は慌てて仕事をしている体を装い笑顔を向けた。相澤先生はこちらに目をやりながら、淡々とした様子で口を開いた。