第16章 私はヴィラン、ヒーローじゃないの
「犬猫山さん」
今日も夜遊びへ向かおうとする中、私は肩を震わせた。後ろを振り返ると、そこにいたのはお隣さんの百ちゃん。彼女は目を釣りあげて、私の元へ来る。
「こんな夜更けにどこへ行かれるのですか?」
「え…と…」
なるべく足音を出さないように気をつけていたつもりだが…気づかれていたのだろうか。
「ちょっと気分転換に…」
「寮の規則で禁止されていますわ」
腕を捕まれ、私は逃げられないと悟る。だが、今日は外に出ないといけない用があった。
「今日だけ…今日だけ見逃してくれない? 百ちゃんには迷惑かけない…お願い!!」
私の言葉に、大きくため息を吐いた百ちゃん。そして、私を見る。
「ここ数日の外出理由は? 規則を破り、先生方の評判を落とすリスクを犯してまでする理由をおきかせ下さい」
やはりそれを言わなければならないか…少し迷うような素振りを見せると、百ちゃんは私に詰め寄った。
「友人である私にも言えないような理由なのでしょうか?」
友人…それをやけに強調する百ちゃんに、私は根負けした。ここ数日様子を見ていて、誰にも何も相談しない私に、彼女は自分が言わなければと思ったようだ。
「ううん。友人の百ちゃんになら言える理由…かな」
少し寂しげな表情をする彼女にそう伝えると、彼女は顔を上げた。そして、私は再度言葉を続ける。
「エンデヴァーに会いに行ってた。理由は話したいことがあったから」