第15章 新たな門出と、仮免
「一度言ってみたかったっス!プルスウルトラ!自分雄英高校大好きっス!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス!よろしくお願いします!」
先程のお辞儀が勢い余って、額を怪我したようだ。隣で血をダラダラさせられて気になるので、私は彼にハンカチを差し出した。
「血が出てるよ。良かったらどうぞ」
「あ…ありがとう…ッス…」
すると、いきなり小声になった夜嵐。大きな巨体をもじもじとさせながら、私のハンカチを受け取る。受け取る時に見た手は、豆だらけだった。…意外に努力家のようだ。そんな彼の他所で、彼の話が始まっていたので、それに耳を傾ける。わたしたちと同じ年に雄英の推薦入試でトップの成績を叩き合格したにも拘らず、何故か入学を辞退した男の話を。
「へぇ…夜嵐くん凄いんだね」
その話を聞いて思い出した。そう言えば、調べた時に黒霧さんがそんなことを言っていた気がする。推薦トップの成績、それは轟以上の実力を意味するから、気をつけておいたがいい相手だと…。
「い、いえ…その……あんたから褒められるだなんて…その……光栄ッス」
いや、だからさっきまでのテンションの高さはどうしたよ。私は赤い顔でこちらをチラチラと見る夜嵐くんに嫌な予感しかしなかった。そして、私はこちらへと来た轟の元へ行こうと、彼に別れを告げようとした。
「じゃあ、私はこれで。そのハンカチあげる……」
「ま、待……」
ガシッと私の腕を掴む夜嵐。緊張した面持ちで、身長差がある体格で私を見下す。異変を察知した轟がこちらへと走りよる…そんな時、彼は私の名を呼んだ。
「犬猫山 夜蝶さんっ!! 好きっス!付き合ってください!」
「…………え?」
ふと、相澤先生の視線を感じ、こっそり見てみると、彼もまた私と同じ顔をしていた。いや…それはそうだ。他校の生徒や先生まで揃ってる仮免試験の会場で…彼は…公開処刑のようにライバルである雄英の生徒に告白したのだから…。