第12章 楽しい楽しい林間合宿
各自作業分担してカレー作りに勤しむ中、こんなところでも才能マンを発揮する爆豪。その隣で私は満面の笑みで人参を切っていた。
「お前がそんなにカレーが好きだったとは意外だったわ」
あまりにも笑顔すぎたため、切島が私にそう聞く。少しあからさますぎたか…いや、しかしこの笑みはもう自分では制御できないな。私は言いづらそうに答える。
「いや…。どっちかっていうと、皆でカレーとか作ったことないからそっちに浮かれちゃってる。ってか、合宿自体も初めてだから…ついテンション上がっちゃって…」
「はぁ!? お前んところ、林間学校とかなかったのか??」
切島の言葉にクラスメートたちが続々と集まってきた。
「えっ! じゃあ、初お泊まり? てふてふちゃんのためにも楽しい林間学校にしようよ!!!!」
三奈ちゃんが張り切ったように腕組をする。
「だな!! 肝試しとかあるっていうし、いい思い出作りしようぜ!!!!」
切島はニカッと笑いながら、親指を立てる。本当にいい人達ばっかだなぁ。私は気づけば、優しい視線を向けてくれるみんなに笑みを浮かべていた。
「林間合宿終わったらさ、お泊まりもしようよ!! 一緒のパジャマ買ってさ!! きゃー!楽しみすぎ!!」
「わっ!!」
テンションの上がった三奈ちゃんが私に抱きつき、私は無意識に包丁を内側へと向けた。
「おいっ!!!!!!!!」
それを見た爆豪が強い力で手を掴んでくれたおかげで、私は指を軽く切るだけで済んだ。
「危ねぇだろ!! 刃物持ってる時に、騒ぐんじゃねぇよ、ピンク女!!!!!!」
「三奈ちゃんは悪くないよ。私が刃物を内側に向けちゃったのが悪いんだし…」
私の言葉に舌打ちをする爆豪。そのまま私の手を掴むと、きゅっとひねった蛇口の真下に指先を突っ込んだ。
「菌が入ったら破傷風になるだろうが!!」
「あ…ありがとう…」
まさか君からそんな言葉が出るなんて思いもしなかったよ。ぽかんとしている間に、消毒から絆創膏まで貼られ、完璧な手当ては終了
する。
「役ただずは皿でも並べてろや!!!!!!」
口は相変わらず悪いけど。私は笑いながら頷き、もう一度彼にお礼を言ったのだった。
「怪我したのか? 先生、救急車を……」
「いや、いいから!!!!!!!!」
皿を並べる時に、轟に絆創膏を見られ、大騒動したのは少しあとの話。