第8章 職場体験の前に起こったゴタゴタ
「…嘘でしょ…」
私は呆然としながら、車の中にいた。何故だ…なぜこうなった…
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今月末までに職場体験の希望先を出せと言われ、私は考えながら下校していた。
「ど、こ、に、しようっかなぁ」
職場体験を写メって、メールで送信。宛先はもちろん黒霧さん。いちいち彼らを通さないと動けないだなんて…あぁ、スパイって辛い。
「まっ、あとからネチネチ言われるのも嫌だし……ね……え??」
私は自分の家のマンションであるエレベーターから降り、そしてぎょっと目を見開いた。
「あ、すみませーん。そこ通りまーす!!」
私の部屋から人が出入りしていたのだ。
「え、え、…だ、誰……えっ!?」
私が慌てて部屋に入ると、そこは家具も何も無いがらんとした空き部屋と化していた。
「犬猫山夜蝶様でございますね。こちらへ」
そして、訳の分からないまま車に乗せられ、私は今に至る。手には2日後に提出するはずの用紙を握っており、それはもうすでにぐしゃぐしゃとなっていた。