第2章 雄英に合格
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優しい子だと思った。犬猫山少女は、息を荒らげて登場した。彼女は偶然にも教え子の1人だったため、もちろん個性は知っていたが、ここまでとは思わなかった。犬猫山少女は一瞬で多くの猫とコミニケーションを取り、操っていたのだ。爆豪少年や轟少年に匹敵する能力の高さだった。
しかし、私は教師として叱った。ヒーロー志望の子が陥りやすいことで、それで目をつけられることも多いのだ。しかし、犬猫山少女はきょとんとして言った。
「襲わせたりなんかしない」
と。どうやらあの少年達の心配をしていると思ったようだ。それを正すと、今度はポカンとした表情で私を見た。それは戸惑いとも取れる表情だった。
「どうしたんだい?」
私は何故そのような表情をするのかわからず聞いた。すると、動揺した様子で
「どう反応すれば分からない」
と答えた。私はそれで思い出した。今まで引っかかっていた犬猫山という苗字に覚えがあったからだ。
今から数十年前の話。当時、街の真ん中にあった個人経営の病院に立てこもり事件が発生したのだ。その後、駆け出しだったヒーローが犯人を捕まえ、無事解決したのだが……当時5歳にも満たない娘以外、病院の経営者である父と看護師であった母、そしてそれを手伝っていた友人は死亡したと聞いている。そのとき、私は街にはおらず、話を聞いて悔しさを感じたのを覚えている。確かその病院の名前が犬猫山病院。………そうか。当時唯一の生き残りの娘は君だったんだね。