第17章 彼氏のフリ*カラ松
side.一之瀬
どうしよう、友達に見栄を張って彼氏いるなんて言っちゃった
そしたらダブルデートしようなんて言われるし
「あ~、誰かに頼んでフリだけしてもらおうかな」
でも、そんなの頼めそうなのって幼馴染の彼らしか・・・
出来ればトド松君がいいかなぁ
ダメもとで聞いてみようと松野家に来てみた
「お邪魔しまーす」
小さい頃から声をかければ上がっていいと、松代さんが決めてくれた
上がり込んで居間の戸を開け、愕然とする
そこにいたのは、鏡を一心に見つめる松野家の次男
手と膝を着いて絶望に打ちひしがれた
カ「ん?一之瀬か、どうしたんだ?」
「他の松は」
体勢を変えずに問う
カ「いないな」
スクッと立ち上がり踵を返す
「お邪魔しました」
カ「なんだ、もう帰るのか?誰かに用なら伝えておくぞ」
そう言われ、ピタッと止まる
どうしよう
カ「一之瀬?」
もう一度クルッと踵を返し、ちゃぶ台へ向かう
カラ松君の側に乱暴に座った
「あの、実は・・・」
口を開くとカラ松君は鏡をちゃぶ台に伏せて、こちらを向いた
「彼氏のフリを頼みたくて」
カ「さっき他の松と言ったということは、俺以外にということだな?」
「え、あ・・・カラ松君でもいいんだけど、言動がちょっと」
カラ松君らしさと言えばそうだけど、初対面の人には少々キツいかなぁと
カ「フッ、遠慮しなくていいんだぞ?この俺の彼女として振る舞えるんだからな!カラ松ガーr」
「やっぱり他の」
カ「ダメだ、その頼みは俺が引き受ける」
格好つけていたところ悪いけど、断ろうとしたら真剣な瞳で告げられた
「・・・あ、あの」
カ「いいな?」
「・・・・分かった」
そう言えばニカッと笑う
カ「それで、いつどうするんだ?」
問われて、後日Wデートすることを話す
呆れることもなく、快諾してくれる
「ただし!お願いだから変なこと言ったりしないで」
カ「変なこと?」
「なるべく横文字使わないで、素に近いカラ松君でいいから」
ちゃぶ台に置かれていたカラ松君の手を握り、懇願する
その手をチラッと見たあと、こちらに視線を向け
カ「・・・分かった」
これで何とかなりそうだわ
心なしかカラ松君の顔が赤いような・・・気のせいかな