第14章 勇気を*チョロ松
ラッピングって思ったより難しいな
慣れもあるだろうけど、彼女は難なくこなしていたのに
少し不恰好に包まれたバラ
彼女の明るい笑顔に合わせてオレンジのリボン
花を後ろ手に店内へ入る
「いらっしゃいませ・・・あ、こんにちは」
毎日来ても嫌な顔一つしないで出迎えてくれる
チ「あ、あの、ですね」
目を大きくして、コテンと首を傾げる
可愛いなぁ
チ「これ、を・・・僕の気持ち」
隠していた花束を差し出す
毎日買っていたバラを、7本まとめて自分で包んだのだ
「気持ち・・・って花言葉ってことですか?」
チ「うん、まぁそう」
ジッとバラを見つめる彼女
流石に初めて買ったのが少しだけ萎れ始めていた
「・・・密かな愛・・・って私にですか?!」
やっと気付いたように驚き、アワアワしだす彼女
チ「忙しないけど楽しそうに働く君に一目惚れしたんだ。一輪で渡そうかと思ったけど味気ないかなって」
「あ、えと・・・ありがとうございます」
顔を赤くして花を受け取る
ハッとしてバラを机に置き、そのままパタパタと走って行ってしまった
戻ってくると手には白い花
それをラッピングし始める。やっぱりリボンは緑
「これ、デージーって言うんです。花言葉は・・・あなたと同じ気持ちです。緑の服が印象的でしたし、似合ってるのでリボンも緑です!」
そう言って差し出された
同じ気持ち・・・?
「初めてここに来た時に真剣な目で見られてるのが、なんだかドキドキしちゃって・・・思わず声かけちゃったんです」
バレてた!どうしよう、なんだか恥ずかしいな
「あの、受け取ってもらえますか・・・?」
チ「あぁ、ごめん!そうだよね」
差し出されたままのデージーを受け取る
チ「よろしくね、一之瀬さん」
「はい、こちらこそ。チョロ松さん」
お互いに照れながら微笑む
恥ずかしいけど、なんだか心は暖かかった
種を蒔いて間もない、やっと芽が出た恋
これからどんな花を咲かすだろうか
彼女と一緒に育てていくのが楽しみだ
-fin-