第13章 触れられない*一松
自宅に常備しているにぼしが切れそうなのに気づき外へ出る
昨日のことをすっかり忘れて同じ道に来てしまった
前方には・・・昨日の女
キョロキョロと何かを探す素振りをみせる
こちらに気が付き
「あ、紫のお兄さん」
嬉しそうに笑い、近寄ってきた
「よかったぁ、お兄さん以外誰も話してくれないの」
ほんとになんなんだ、逆ナンか?
こんな清楚そうなのに人は見た目によらないな
一「つか、なに・・・何してんの」
ん~、と顎に手を当てて考えている
「ここで何かをしようと思ってたの。でもそれが何なのかわからなくて・・・」
なんだそれ
もうこれ以上関わるのはやめよう
そう思ったのに
「それが分かるまで、お兄さん話相手になって!」
一「は・・・?嫌だし」
「いいじゃない、お兄さんしか話してもらえないんだから」
これは何を言っても無駄だな
まぁ、可愛い子と話せるんだ・・・慣れないプラス思考に無理やりもっていく
「で、お兄さん」
一「一松・・・お兄さんじゃ面倒でしょ」
「一松君か、よろしくね」
ニコッと微笑む
最初の清楚な感じとは違って無邪気だ
一「で、そっちは?」
「私は一之瀬・・・でも名前以外覚えていないの」
一「え・・・」
記憶喪失というやつか?
こんな女の子が記憶喪失で道の真ん中で立ち往生
・・・やっぱり世の中分からない
というか、なんでみんな無視なんだ
「ね、一松君はどんなものが好きなの?」
当人は全く気にしてない様子で話しかけてくる
一「・・・猫」
「猫かぁ、たまにこらへんも猫通るよ」
一「へぇ」
ひょんな出会い、そこから話し相手というお年寄りの交流のような関係が始まった