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松の間

第13章 触れられない*一松


side.一松


いつもの路地裏で猫を愛で、満足
いつもの帰り道を歩く

1つだけいつもと違う
その帰り道に女の子が立っていた


白い肌に白いワンピース
どこぞのお嬢様みたい
僕には縁遠い人種だ

関わる必要がないと判断し、足早に脇を通り抜ける

「ねぇ」

小さな声がする
いや、まさか僕に向けたわけがない

「ねぇってば、紫のお兄さん」

どうしよう、逃げたい・・・
顔だけ振り返ると、ワンピースを風に遊ばせながらこちらをみていた

その姿が、瞳があまりに綺麗で返事をするのも忘れて見つめる

「お兄さん?」

少しずつ近寄ってくる彼女
なぜだろう、本当に目が離せないし逃げられない

目の前まできた彼女を見下ろす

一「な・・・何」

やっと声が出た
そもそも僕に何の用なんだ

少しイライラしていると、不意に微笑まれた

「ふふっ、怖い?」

一「・・・いきなり見知らぬ女に声かけられたら怖いでしょ」

そう答えればキョトンとして首を傾げている

「そう、だから皆無視したのね」

え、皆って誰彼構わず声かけてんのか
危ない奴だな、やっぱり逃げよう

くるっと回れ右をし、走り出す
後ろで何か言ってるけど無視だ

玄関をピシャリと閉め、ゼェゼェと喉を鳴らして息をする
あんな綺麗な女の子が逆ナンか?
とにかく色々と声をかけているなんて

世の中恐ろしいな
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