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松の間

第10章 君の絵*十四松


無心に鉛筆を走らせている間、十四松君は静かだった
下書きが終わり、一息つく

十「これ、僕?」

「うん、今の十四松君の顔がどうしても描きたかったから」

あの一瞬の表情を残しておきたかった
忘れる前に、そう思ったら手の方が先に動きだしたんだ

十「えへへ、僕一之瀬ちゃんのこと考える時こんな顔なんだね」

あ、そう言えばなんか告白されたような…

「あの、さっき私が好きとか言った?」

十「うん!コシヒカリ!!」

「コシヒカリ?お米食べたいの?」

突拍子もない単語に私はキョトンとする

十「違ったー、ひとめぼれ」

ひとめぼれ、もお米の種類だよね…て違う!

「え、あの、何で」

意味が分かった途端、プチパニックを起こした
だって今日会ったばかりだし、名前しか知らないのに
ワタワタする私をよそ目に

十「一之瀬ちゃんが可愛いのとー、絵が綺麗だから!」

ヒョイとスケッチブックを手に取る十四松君

十「色んなものを色んな角度から見れないと絵は描けないよねー」

え、なにそのちょっと難しい感じ
さっきまで子どもみたいに無邪気で素直だったのに

十「ねーねー、一之瀬ちゃんは?」

「え、えと会ったばかりだしよく分かんない…かな」

十「そっかー。でもこれから色んなこと話したり遊んだりすれば大丈夫だよ!」

またニパッと笑う。眩しい笑顔
確かにこの先、この笑顔をずっと見ていたいと思う日がくるかも知れない
人生何があるか分からないもの

「そうだね、これから仲良くしてね」

十「うん!僕君に好かれるように頑張る!」

そう力強く胸を張った十四松君の横顔を、沈みかけた夕陽が照らしていた

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