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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第4章 Episode3 #過去


外に出てみると、もうすでに辺りは真っ暗だった。私が倒れたのはおそらく、昼前後。つまり、私は6時間ほど眠ってしまったということになる。

今なら分かる。
全てを思い出した今なら。






私の家の場所も全部。





【梶裕貴side】

倒れてしまった彼女にすがり付くようにして抱きついて何度も何度も謝りながら涙を流していた梅ちゃんも、色々と限界が迎えたようだった。身体的にも、精神的にも。

だから俺は、無理をするな、と梅ちゃんを家に帰るように促した。梅ちゃんを思ってのようにそう言ったが、本当にそうなのだろうか。

本当は、彼女と二人っきりになりたかっただけじゃないのか?

なんて、自分に問うても答えなんて出ない。

きっと、都合のいいように答えてしまうから。

俺の心の汚さが憎い。
彼女は、自分が忘れたがるほどの罪を怖がっていた。でもそれは、それだけ彼女は心が綺麗である証拠だ。俺なんか、彼女を求める為なら何でもするつもりでいるし、この独占欲の強さを恐怖に思ったことなど一度もない。

なんて、腹の中では思っていても面には出せない。そうすれば、きっと彼女に嫌われてしまうから。

「ふっ……」

俺は、自嘲的に微笑んだ。
彼女が目の前で倒れているというのに、俺は梅ちゃんみたいに取り乱すどころか、逆にすごく心が落ち着いている。己の醜さを改めて実感する。

彼女は必死に過去を受け入れようとしていた。どれどけ、足が震えようと。どれだけ、手が震えようと。彼女は諦めなかった。

そんな時。
俺に弱いところを見せてくれた。
俺を頼りにしてくれた。

そのことが、どれだけ嬉しかっただろうか。彼女には到底分からないだろう。

今目の前にいる彼女はとても無防備だ。いつも人との間に壁を作りたがる彼女とは全くの別人のように思える。

今だけは、彼女は俺だけのもの。

そう思っても、いいだろうか。

『う………うぅっ………』

苦しそうに呻く彼女の手をそっと握り、目を瞑った。

「大丈夫。俺が君を守ってあげるから」

例え、俺がどれだけ汚い心を持っていたとしても。どれだけ歪んでいたとしても。

変わらない想いがある。
分かりきったことだけど、それでも。
















どうやら俺は、どうしようもなくミネが大好きらしい。
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