• テキストサイズ

君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第2章 Episode1 #約束


あれから一週間経った。
〈あれから〉というのは、〈梶さんと出会った日から〉の言い換えだ。

マフラーを返しに来てください、と約束したものの……全く来てくれない。いや、彼が忙しい事は充分わかっているんだけど……。


私はあの日、一度家に帰ったのだ。
seasonに行く途中、そういえばお風呂に入っていないし服はそのままだということに気付いたから。さすがに、飲食店を経営してる者が不衛生なのは………ねえ。


ついで、とは言ってはなんだけど彼について調べてみた。パソコンで検索をかけると一発で出てきた。

サイトを一つ一つ開かなくてもわかる。


彼は、人気の声優なんだ。



私はその時、初めて彼の遠さに気付いた。

私なんかが、次会う予定を彼に押し付けても良かったのだろうか。図々しいのではないか。

私は、彼に連絡先を聞かれた時、ケータイを持っていなかったために、連絡先を交換できなかった。だから、私は彼にマフラーを貸した。また返しに来てください、と。つまり、彼に会う約束を押し付けてしまったのだ。彼はそう望んでいなかったかもしれないのに。

第一、彼にはたくさんのファンがいる。今人気で、しかもあんなにかっこいい。ならば、女性ファンだってかなり多いに決まっている。そんな方々がいる中で、私は彼を全く知らなかった。ファンじゃないどころか、全く知らなかったのだ。そんな私が彼とたまたま出会ったというだけで、何も特別なことは無い。




所詮、運命なんか最初から無い。
全て、偶然から成るんだ。
/ 65ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp