第22章 後ろの正面だぁれ
「あ、あ、あ、あ、あ」
「うおぉ! んはぁ! いいっ!」
湯船の淵にしがみ付き、揺れるお湯に逆らいながら足を踏ん張り、歯を食いしばる。
いやほんと、皆さんが思っている以上に歯を食いしばってる。
俺の尻の穴でお湯と我慢汁が混じり合い、じゅぼじゅぼと誰が聞いてもあの音だと気が付く音が湯屋中に響き渡る。
湯につかって火照った身体、ほどよい昨夜の疲労感も手伝って、俺も知らぬ間に堅くなっていた。
「男の癖に名器とは」
「ったりめぇだろ、俺を誰だと思ってんだ、十兵衛さんだぞ」
くっそ、まだイキそうもねえか。
このままじゃ自分のチンポを触らずして俺が先にイっちまいそうだ。
廻された時以来か、ケツだけでイクなんて。
「ん! ん! ふん!」
「あっ、あぐっ、ま! 待ってくれ、イっちまう!」
「かまわん」
けっ、余裕こきやがって。
「あ、あんっ! イッく、くぅ!」
びゅ! びゅ! と勢いよく自分の精子が飛んで行く様が良く見えた。
幸い、昨夜は尻の穴を貸しただけで自分はイっていなかった。
数日分溜まっていたおかげか、はたまたこの大男の太いチンポが良かったのか、精液は湯船に入ることなく飛んで行った。
……多少はたれたかもしれねぇな。すまん銭湯の主人。
「尻だけでイク男を見たのは初めてだ」
「そもそも! おまえさん、男を抱くのは二回目じゃ?」
「それもそうだ! 続けるぞ!」
「え! あっ、う!」
余韻が過ぎるのを待つ暇など与えてもらえるわけもなく、俺はただ後ろから突かれる振動に逆らい、また歯を食いしばる。
湯で暖まった時の汗とは違う、冷や汗じみた不快な汗が身体を伝う。
しばらくして大男が俺の中で果てた。
果てた瞬間を感じている余裕なんて無かった。
チンポを抜かれた瞬間、尻の穴に指で栓をして、湯船から飛び出したのは言うまでもない。
……これ以上銭湯の主人に迷惑をかける訳には。
「おい、金はちゃんと支払ってもらうからな」
「……」
「俺を誰だと思ってんだ? ここらじゃちいと有名な男娼の蜂名十兵衛さんだぞ。タダで抱けると思ったら大間違いだ」
「……はぁい」
一瞬でもここが仕事場じゃなく、公共の風呂だという事は忘れても!
俺が男娼で、ケツを掘られるのが仕事なのは!
忘れませんからね!
(この後仲良く主人に叱られました)
(ク・セマシテク)
