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俺のコタンは、あなたの腕

第19章 アシリパ




「十兵衛! どうしてこんなところに」
「いつもの気まぐれだよ。アシリパこそ、なんでこんなところに?」
「まぁ、色々あるんだ」

いや、確かにアシリパがこんなところにいるのかも気になる。
しかし、俺が一番気になるのは……

「それに、白石と佐一。変な組み合わせだなぁ」
「アアアアアシリパさん!? この人と知り合い? 俺もこの人知ってるけど相当ヤバイ人だよ! 何人も食い散らかしてる人だよ!」
「佐一さぁん、人聞き悪いなぁ」

昼間の行脚、どこへ向かっているかなど聞きはしないが、ちょっと腰を落ち着けて、かわいい従妹と語らうくらいは許してくれ。

「十兵衛、今までどこにいたんだ?」
「ずっと小樽にいたさ。たまに札幌に行ったりもしたけど」
「私たちも小樽に寄った。白石も杉元も」
「じゃぁ、俺はたまたまその時に二人に会ったわけだ」

アシリパを俺の膝の上に座らせ、持っていた煮干しを与えながら愛でる。
そんな俺を離れた向かい側で、身を寄せ合って震えている男二人。
不甲斐ない奴らだ。

「レタラは?」
「山に、帰った」
「……それで良い」

しゅん。と俯いてしまったアシリパの頭を撫でてやりながら、男どもの方へ視線を向けると、蛇に睨まれた蛙でもなかろうに「ひぃ」と固まる。


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