第3章 盛りの王
なぜか目の前に居る客は、自らここへ飛び込んで来たというのに正座して冷や汗を流している。
坊主頭にくたびれたちゃんちゃんこ。
俺がにじりと近づこうものなら、あちらもにじりと後ずさり。
「あんさぁ。仕事できねんだけど?」
「し!仕事とは?!」
「はぁ?こっちが聞きてェよ?お前客だろう?」
「あ、あぁ。客さ!俺は客だ!だから可愛い娼婦をだせってんだ!」
「いやいや。俺だから。それ。して娼婦じゃなくて男娼だからね。ここは。」
絶対に間違って入店、というか入室したんだろうが。
最初は俺の事を遠目で女だと思ったんだろう。
だからおっかけて入ってきて俺が名乗ると途端にこれだ。
「か、帰る。」
「待てよ。俺はあんさんの為にさっき来た客を断ったんだぜぇ?」
「紛らわっしいんだよ!入口に男って書いとけよ!」
「あんだと!おめぇさんが最初に俺の名を聞いとけば間違う事もなかっただろ!いいから金出せ!脱げ!ヤらせろ!」
「はっ!やなこった!男相手に俺の衣肌を見せられっか!」
「てめぇの臭そうな皮膚なんぞ、引っぺがして肉にしてやらぁ!オラ!脱げ!むしゃくしゃしてんだ!ヤらせろ!」
「ひっ!な、何で知ってんだ!」
突然襟元をかきよせ、部屋の隅に後ずさり。
知っている?
何の話だってんだい。
俺はな、今夜の客が大外れでむしゃくしゃしてんだい。
こいつはムカつくから気持ちよくならなくてもいい。
俺は気持ちよくなってイって、雀の涙でも良いから金貰って、明日また客を探す!
客に詰めより胸元を抑える手を力まかせに避け、胸を肌蹴噛みつく。