第17章 枯れないじじいはクソジジイ 2
今日は顔見知りの客には声を掛けなかった。
たまにゃ休みも必要かと思って。
ってたのに。
「ここ、蜂名っていう男娼の部屋で合ってるかい?」
コンコン。と確実なノック音に部屋の隅から体を起こして、戸を開ける。
するとそこには予想もしていなかった、外国人のジジイ。
「合ってるけど。どちらさん?俺、外国人の友達いねぇよ?」
「一昨日馬を買いに来た若山と言う男が、面白い男が居ると話しているのを聞いてね。来てみたんだが。」
「いや、来てみたんだが。じゃねェよ。俺は大道芸人でも噺家でもねぇよ。」
「うん。男と寝る仕事。何と言ったかな。」
「言わせんのかよ。クソジジイ。男娼だ。なんだ。客になるのか?」
扉を開けたまま話す。
こいつを中に入れる理由はないからだ。
客になるってんなら話は別だ。
他の客らと同じように扱う。
若山…若山喜一郎。あの「おやぶぅん」とか言う変な部下連れてきやがった男か。あいつも「姫!」とか呼んでたし、ジジイにゃ碌な奴がいねぇな。
「いくらだね?」
「特に決めちゃない。いくら出す?」
「お気持ち。ってやつだね。いいよ、お金はある。満足させてくれるなら5円でも出そう。」
「ふぅん5円。上がんな。相手してやるよ。」
薄暗がりの部屋に外国人の男を上げる。
この部屋の汚さと狭さ、それから染みついた匂いに少し驚いたのだろう。
オウ。と言葉を漏らしていた。