第15章 4P
「杉元さん。」
見覚えのある背中に声をかけると、妙にびくついた。
「杉元さぁん?」
「は、はい。何でしょう。どちらさまでしょう。」
「なに。ビビり過ぎだろうが。」
俺よりも大きな身体の癖して、小動物のように怯えきっている。
なんだなんだ、白石みたいじゃないか。
「俺だよ。俺。この間蕎麦屋で蕎麦一緒に食った、蜂名十兵衛だよ。」
「あ。あぁ、蜂名さん。はっ!おしっ!お仕事ですか!」
「いやさ。今日は違うんだよ。」
「何が違うんでしょう。どうして夜にその…その…」
「女物の着物着て、ちょっと化粧して、髪を結ってるかって?」
「へぃ!」
へい?
へい?はは。
「お呼ばれしてたのさ。金持ちの道楽よ。ちぃと顔出してきただけ。ところであんさんは?どうして?それこそ遊びに来たんじゃないのかい?ん?ん?」
「あ!いえ!その!タマを買いに…。」
「タマ?」
「タマ。」
「タマ?」
「この時間、開いてる店知ってます?」
まぁ、玉ぁ探している奴なんてあんまり聞いたことないけどな。
サオかアナ探してるならわかるけどよ。
タマって…どういうこっちゃ?
「あー…タマなぁ。」
「昼間はちょっと出歩きにくくてぇ。」
「ふぅん。杉元さん訳ありなの。まぁ、俺んトコ来なよ。タマ、俺のでよければ。」
「あ!本当に!」
うん?喜ぶ?
蕎麦屋で迫った時は初な反応返してたのになぁ。
動きにくい女物の着物。
ここへたどり着くまで、何人かの男に声をかけられたが、今日は肩が凝ってるからお断り。
つーか、女だと思ってるから尚お断り。