第14章 電報一本駆けつけます
ガンガンガン!
昨夜遅くまで仕事をしていた頭には、何重にも反響して聞こえる。
枕を戸に向けて投げても一向にやまないノック音。
「なんだぁ!うるせぇ!」
「電報です。」
「あーもう!」
しなっしなの毛布を腰に巻き、一応下半身だけは隠し、ちょっとだけ扉を開けて電報を受け取る。
ぴら。
と開いて一番に目に飛び込んで来た文字に驚いた。
「マカナックル!?とオソマ?」
送り主だ。
内容より先に、送り主の伯父と姪がわざわざ電報を送ってきたことに驚いた。
あぁ、いや違う。
内容。
『怪我人ノ男アリ 手ニ負エヌ 溜マッテ辛ソウ 助ケ求ム』
『帰ッテキタラ キサラリ ヤレ』
あ?
マカナックルからは仕事の依頼だろう。
オソマは……遊んでくれって言ってんだな。
面倒だ。
仕事をしたら帰る。
と、言う事で。
「よう。来てやったぜ。」
「十兵衛!」
「オソマ。見ないうちにでかくなったな。フチ…は変わらんな。あー、はいはい。久しぶり久しぶり。」
チセ(家)に入れば、電報に書かれていた通りに怪我人の男。
どうやら軍人のようで、鋭い視線でこちらを睨みつけていた。
「マカナックルはいないのか?オソマ。」
「山だ。頼んでいた人はそこの人。谷垣。」
「こいつね。はいはい。仕事が済むまで、外に居てくれ。……フチもだ!」
ばあちゃんは俺の仕事を手伝うか?と心配してきたが、むしろ心配ご無用。
まぁ、怪我の男が溜まって辛そう。とわざわざ電報をしてきた。
オソマやフチ(祖母)は何が溜まって辛そうか?と分かってはいないため、呑気なもんだ。
「いいか?少し難しい事をする。覗けば失敗して谷垣とやらは死ぬかもしれない。わかるか?だから、覗くな。すぐ終わらせる。」
強く二人に言い聞かせれば、深刻そうな顔をして、コクコクと何度も頷いていた。
戸を降ろし、窓を降ろし、外から誰も覗けないように紐でくくりつけた。
これで彼の恥ずかしいところは誰にも見られない。