第12章 欲しいのは愛じゃなくて
今日は目が覚めたら枕元に金だけ置いてあった。
百之助はいつもそうだ。
分かりやすい。
大きな戦争へ行く前や、嫌な事があった時。
そんなときは決まって不機嫌にここへやってきて、ヤるだけヤって消える。
まるで、消えに行く前の猫。
最後に甘えに来る猫。
そうでない時は、朝まで一緒に居て昼飯を一緒に食う。
「……。」
話して欲しい。
話して欲しいが聞きたくない。
聞けば放っておけなくなる。
深く誰かと関わる事はもう止めた。
自分を愛してくれるのは、もう、猫だけで良い。
「腹減った。」
起き上がり、服を着る。
銭湯へ行って色々洗い流してすっきりする。
百之助から貰った金で、今日の飯はちょっと豪華にしてしまおう。
宵越しの金は持たねえって決めてんだ。
(ク・セマシテク?)