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俺のコタンは、あなたの腕

第10章 枯れないじじいはクソジジイ




銭湯は良い漁り場だ。
俺は毎日通う。
だから、毎晩男と寝ているからって不潔で汚い訳じゃない。
銭湯に来る時間は朝、それから昼までたむろする。
あまり若い男は居ないのだが、この朝の時間にここへ来る若い男は目立つ。
目立つし、一人でいる若い奴は話しかけやすいと言う事がある。

だが、今日は。

「枯れ木立。」
「誰が枯れ木立だ。」
「あ、失礼。」

右を見ても左を見てもジジイ。
湯船につかりながらぽつりと漏らした所だった。
丁度湯船に入ろうとした、なんともジジイにしちゃ良い身体のジジイ。
長い白髪とヒゲ、それからしおれたチンポが湯船の前で仁王立ち。

「若いの、こんな時間に風呂に入って。漁りか?」
「なんで?」
「仕事柄。こんな時間に手が開くのはお前の様な虫みたいな生活をしている奴らだろう?」
「まぁね。」

入ったら?と顎をしゃくると、ざぶざぶと湯船に入る。

「昔はお前の様な商売をしていた男は多かった。」
「へぇ。」
「顔もいい。体も強そうだ。何かやっていたのか?今の仕事をする前は。」
「ははっ。今あったジジイに話す事じゃないさ。そうだね。上客には話すかも。」
「上手い口だ。」

知らないジジイがまた一人また一人と風呂を上がっていく。
もうもうと立ち込める湯気が、ここはどこかと幻想させる。
今か、昔か。

「私は昔、毎晩毎晩女を抱いた。右手にも左手にも女だ。」
「まぁ。ジイさん性欲強そうだもんな。なぁ?」
「男はさすがにな。」
「良いもんだと思うけどな。」

じろり。とジジイと目が合う。
ジジイの癖に強い目で、まるで飢えたホロケウ。
カムイではない、ウェンカムイだ。

「後腐れなくて。」
「ふん。私は煩いぞ。」
「うるさい?」

にんまりと口角を上げたジジイに、たらりと汗が流れた。


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