第6章 脳汁
「変な刺青ねぇ」
きな臭いな。
関わらない方がよさそうだ。
刺青云々の前に、百之助だ。
病院だって?
「百之助?」
「だれだ。」
「俺だよ。十兵衛。」
一人の軍人が護衛する一人部屋。
気ままな病院暮らしか?
中にはいるとベッドに括りつけられている百之助の姿。
痛々しすぎる。
「なにがあったんだよ。」
「落ちた。高い所からな。無様だろ?慰めろ。」
「大丈夫なのか?」
やはり詳しくは教えてくれなかった。
しかし、生きているだけで良い。
百之助だったら俺は一生おぶって生きてやるよ。
「頼むから無茶すんなよ。」
「馬鹿言え。俺は軍人だぞ。」
「だからだよ。死なれちゃ困る。」
「何でだ?」
「言わせんな。」
包帯だらけの顔で笑う百之助。
呑気に仕事仕事と、客を取るのに必死になっていた自分が恥ずかしい。
こんな苦しい思いをしていたなんてな。
「俺は聞きてェよ。十兵衛。」
「寂しいから。」
「寂しい?どうして。」
「俺はお前に依存してる。どんなに良い客と寝ていても、俺の頭ん中は百之助でいっぱいなんだよ。」
「はっ。嬉しいね。今日はここに居てくれよ。俺も久しぶりにゆっくり眠れそうだ。」
ばーか。
(ク・セマシテク)