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俺のコタンは、あなたの腕

第6章 脳汁




百之助、百之助、ひゃくのすけ、ヒャクノスケ。

「ううん?きみは。」
「百之助?」
「尾形の事かな?」

昨晩は寂しく一人で眠った。
客を取ったところで、まともに使えないケツでは良い金はもらえないだろうから仕方なく。
山へ行くと言っていた百之助だが、そろそろ街に戻ってきているだろ言うと検討を付け、街をうろついているところだった。
尾形。
と聞こえて振り返ると、恐怖か驚きか、体が固まった。

「つ、鶴見さん。」
「尾形なら、病院に居るよ。」
「え?病院?」
「うん。暇なら行っておやり。」

鶴見さん。
陸軍の中尉さんだ。
戦争で前頭部の頭蓋骨を砲弾で吹き飛ばされながらも、生きながらえた強い人だ。
自ら気が荒いと言われるが、なぜか俺はそう言うところを見た事が無い。
彼の上官、和田大尉は俺の客だ。
大口の客で、良く兵舎内で顔を合わせる事も多かったというのに。
和田さんとも最近会っていない。

「鶴見さんはお仕事ですか?」
「あぁそうさ。君も、不審な人物を見つけたらすぐに教えるように。そうだね、変な刺青とかね。」
「刺青。」
「君はそう言うのを見る機会が多いだろう?」
「えぇ。多いですが、今のとこ変だと思うものは。」

そうかそうか。とにこにこ笑う。
まぁ、少し怖いとは思うがな。
頭を下げ、教えてもらった軍人が多用する病院へ足を向ける。


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