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俺のコタンは、あなたの腕

第5章 まとも。まともか?




今日も飯を食いに外へ出る。
うわぁ、寒い。
いつもの飯屋を目指して歩くと、ここらの地理に詳しくないのだろうシサムが一人。きょろきょろと歩いていた。

「あんさん。何か探してんのかい?」
「うん?いや、待ち合わせの店が見つからなくて。」
「なんて店?てぇか凄い顔の傷だね。」
「え!あ、あぁ。まぁ。」

傷の男の言う店は俺の行きつけの店。
向かう先は一緒だ。と案内してやる。

「へぇ。戦争帰りか。お疲れさんだな。」
「別に。俺はあんたみたいな、男娼を見たのは初めてだ。」
「個人でやってる奴かい?なんも、俺は伝がある。贅沢も望まない。」
「客入りはいいのか?」
「ここ数日は良い。」

懐に手を突っ込んだまま俺は歩く。
隣のシサムは鉄砲を抱えて堂々と歩く。
元とはいえ、こいつも軍人だ。
腹ん中に何か黒い獣を飼っているに違いない。
軍人じゃなくったって飼ってる奴は大勢いるが。
なに。俺は違うよ。

「あんさん。名前は?俺は蜂名十兵衛。女に困ったら俺の所に来てくれよ。」
「え!?いや!」
「いや?」
「間に合ってます。」
「男、間に合ってるヤツなかなかいないぜ?」
「いや!そうじゃなくて!興味ないって言うか。」
「興味?ははん。やったことないな?男と。」
「普通やらないでしょ!普通に生きててやることある?」
「食わず嫌いは何とやらだぜ?」
「そこに関しては苦手克服する必要ないから!好きな物だけで満足だよ!」
「うーん。俺の考えとは違うなぁ。」
「違って当たり前!十人十色!みんな違ってみんないいから!」

男は待ち合わせの為に、俺は飯を食うために、一つの店へ入る。
中は幸いにもがらがら。
だからと言って、ここまで一緒に来て置いてバラバラに座る事もない。
俺とシサムは隣同士に座る。

「なんで?前に座れば?」
「あ?あぁ。職業病だな。いいだろ?」
「いやうん。いいけど。」

互いに注文を済ませ、飯が出てくるまでの間、暇をつぶす為に口を開く。


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