第2章 革職人の女の子
「ごちそうさまでした。とっても美味しかったです。それに…」
意を決して…ってなわけでもなく、計画してたわけでもない。でも、今日あたりにでも何か行動を起こしたかった。
店を出ると、夜の風が少し酒の入った体には気持ちよかった。
「それに…とっても楽しかったです。」
少し恥ずかしそうに、それでいて嘘は全くないのだろうと感じさせる微笑みと共に、ふわふわとした心地の良い声で礼を言われる。
「少し飲みすぎたか?顔が赤い。」
普段はあまり酒は飲まないと言うが、酒が嫌いというわけではないらしい。
「い…いえ、大丈夫です。」
赤いのは酒のせいだけじゃねえよな?なんて…心内で自惚れてみる。
少しふわふわとした足どりのの手を取れば、さらに赤くなって固まった。
「そんなに緊張すんなよ。」
食事中は、のおじいさんであり、革物屋の店主である偏屈なじーさんの話をしたり、お互いの仕事の話をしたりで、時間はあっという間に過ぎてった。
はじめは緊張からか、硬かったも、だんだんと楽しそうに話す表情を見て、ああ、俺は本当にこいつに一目惚れしたんだって確信した。
夜風にの髪がなびく。
普段店にいる時とは違った雰囲気に目を細めれば、視線に気がついたと目が合った。
「寒くねえか?」
「だ、大丈夫です。」
顔を赤らめて俯く姿に、男の本能をくすぐられる。
暗い夜道に、空からの月明かりと、店から漏れる灯りがちょうどいい。
の店の前まで来れば、繋いだままの手を離すのが名残惜しかった。
「ごちそうさまでした。とても…とっても楽しかったです。」
月明かりにもよく映える澄んだ笑顔のに、俺の鼓動は速度をあげる。
返事のかわりに、繋いだままのその手をそっと持ち上げて、そのまま甲に口づけを落とした。
ビクリと固まって、大きく見開くの瞳をそのまま見つめて、
「また会いに来ていいか?」
と、聞けば、恥じらいながら「喜んで」と消え入りそうな小さな声が聞こえる。
そっと額にも口づけをすれば、目をぎゅっと閉じて固まった。
その反応が堪らない。
体の内側から欲望が湧いて来るが、それはなんとか抑え込んだ。