第4章 洗脳ハートⅣ「不器用な心」
「あの、今日って...非番、じゃないですよね?」
「だったら何でィ。」
突然の沖田の登場に対し、仕事はどうしたとか
副長に見付かったらどうしようとか、
色々と問題事が幾つか頭に浮かんだ。
「...いえ、何でもないです。」
けれど、自分の為にわざわざ気遣って
仕事を抜け出して来てくれたのかと思うと
そんな事すぐに頭から消え去った。
普段からサボり癖はあって
随分、困らされているけれど
今回ばかりは正直、少し嬉しかった。
そんな事を思っていると、沖田が話を元に戻し
本題と言わんばかりの態度を示した。
「はァ。仕事なんざァ何時でも出来らァ。
んな事よりもさっき言った事、分かるかィ?」
「ぁ、えっと、私の持ってるもの......ですか...?」
「あァ、簡単な事でィ。」
「......分かりません...」
自分が女だという事や、力が劣っている事が
どうしても頭から離れず、今まで上々だと
評価されていた刀の腕すら信じられなくなっていた。
例えるなら、チートでも使わなければゲームにも
勝てない様な、それ程の負い目を感じていた。
すると、沖田はポキポキと首を慣らし
わざとらしく面倒臭そうに話し出した。
「ったく、身体が小せぇなら小回りが利くし
目立たずに相手の懐にも入りやすい。
油断を作ってスキを突けるだろィ。」
「は、はい......?」
「まだ分からねぇってかィ。」
「...ぇ...」
「お前が女だから、出来る事もあるんでィ。
勝手に自滅してんじゃねぇや。」
それは他の隊士とは違う、真衣自身の
負い目であり悩みの根源でもあった。