第9章 其々の戦い
目付きの怖い1年とオレンジ頭の小さい1年が、俺の事をじっと見つめてくる。
(うわ。なんか凄い見られてる…)
東「え~っと、なんか用かな?」
日「俺、エースのプレー生でみたいです!だから!キラキラキラ」
小さい方の1年生が、凄くキラキラした目で俺を見てる。俺にも覚えがある。上級生のプレーがかっこよくて、目を見開いて食い入るように見ていた時、大地に子供みたいに目がキラキラしてるぞって言われた。多分そんな感じだ。
東「えっと。日向、だっけ?俺はさ、もうスパイクの向こう側が見えなくなっちゃったんだよ。スパイクの先の景色が。だからもう」
日「わかります!俺、下手だし、タッパーもパワーも無いからブロックに捕まってばっかりで…でも、今はコイツのトスがあるから、どんなブロックとでも戦えます!」
目付きの怖い1年…確かセッターの影山だったかな。
凄く嫌そうな顔をしながら、日向を睨み付けている。
影「おい、引っ張るな!」
日「ブロックの向こう側がパーっと!見えるんです!」
東「っ!」
日「だから!」
日向の勢いに押されて、一本後ろに下がったとき、
"キーンコーンカーンコーン"
タイミングよく鐘が鳴る。
影「授業が始まる。戻るぞ。…遅れるっつってんだろ!」
日「痛ぇ……」
(うわー。痛そう。)
影山の容赦無い平手打ちを頭に食らって、日向の頭は気持ちいいくらいの音が鳴る。両手で頭をさすりながら廊下を歩いて行く日向を見ていた影山が、俺の方に向き直り口を開く。
影「…あの旭さん。」
東「は、はい。」
影「一人で勝てないのは当たり前です。俺もそれ分かったのつい最近なので、偉そうなこと言えないっすけど。失礼します。」
影山の言葉は、俺の心にどっしりと重たい何かを落としていった。