第9章 其々の戦い
次の日、私は1人で東峰先輩の教室へ行く。
男子「あれ?1年生?誰かに用事?」
貴「あ、あの、東峰先輩いますか?」
男子「旭?いるよ!おーい!旭!!」
呼ばれた東峰先輩が此方へくる。私を見て驚いた顔をしていたけど、ぎこちない笑顔で迎えてくれた。
貴「すみません。教室にまできてしまって。」
東「いや、良いよ。何か用かな?」
貴「…あの、戻ってきてくれませんか?バレー部に。」
私の言葉に、東峰先輩の顔が曇る。
貴「入ってきたばかりで、口出しするのも、迷惑だとは思ったんですけど。でも、菅原先輩も澤村先輩も西谷先輩も東峰先輩も…皆辛そうで。」
東「え?俺も?」
貴「はい。辛そうな顔をしてます。肩書きがある分、責任とかプレッシャーとか沢山背負ってきたと思います。でも、あの時は一人で背負っていたかもしれないけど、今は違います。昨日来た1年の二人なんて、とんでもない技を持ってます。東峰先輩にばかり負担はいきません。だから、エースとして、またスパイクを打ってくれませんか。みんな、東峰先輩を待ってますから。」
東「っ」
貴「なんか説教みたいになってしまいました。すみません。では、私は教室に戻ります。失礼します。」
私は言いたい事だけ伝えると、逃げるようにその場を離れた。
それは、東峰先輩からの言葉を聞きたくなかったから。
(言いたいことだけ言って、嫌なやつだよね。)
でも、私はもう、
みんなのあんな顔を見たくない。
西谷先輩に、正式な復活をしてほしい。
東峰先輩のスパイクを見たい。
菅原先輩の元気なプレーを見たい。
そしてなにより
澤村先輩の辛そうな顔を見たくない。
(私も自分勝手だなぁ。)