第9章 其々の戦い
菅原side
後輩達と一緒に坂道を下る。途中にある坂ノ下商店で、大地がいつものように肉まんを買いに中へ入る。
あの大会が終わるまでは、ここにもう一人仲間がいた。
誰よりもバレーが好きなあいつが。
菅「このままじゃ、いけないな。」
小さな独り言は、すっかり賑やかになった帰り道の音に消されて無くなる。
澤「悪い。肉まん売り切れだった。」
菅「珍しいな!」
肉まんの代わりにチョコボーが俺の手に乗っかった。
辛党の俺には甘過ぎるチョコの味。
菅「やっぱり甘過ぎるなぁ」
貴「あれ?菅原先輩は甘いの苦手ですか?」
菅「ん?俺は辛いのが好きなんだ。」
澤「あ~あ、あの激辛麻婆豆腐か。」
貴「え?!凄く辛そうな名前ですね…」
菅「今度奢るべ!」
澤・貴「いや、遠慮するわ(します)。」
菅「えー」
この二人は本当に似た者同士だ。なんか突っ込みどころが無いっていうかなんと言うか。
最近部活でも感じる。トスをあげる時、俺があげたいトスが求められない事の寂しい様な、つまらないような気持ち。
(…エースへのトス)
今のメンバーで決定的に足りないエースという存在。そして、そのエースは…一人だけ。
(…旭…)
部員達と別れて、車通りが殆ど無い横断歩道の手前で1人立ち止まる。
菅「本当。このままじゃ、いけないな。」
この先へ、俺は行かないといけない。いつまでも、立ち止まったままでは居られないのだから。