第1章 はじまり
と、いうわけで………
澤村先輩に家まで送ってもらうことになった。
貴「澤村先輩、疲れているのにすみません。」
澤「帰り道一緒なんだから、気にすんなって。」
そう、まさに偶然。家がご近所さんだったのだ。
澤「でも、家の周りで会ったこと無いよなぁ。」
貴「あ、私、3月に越してきたばかりなんです。」
澤「あ、もしかして、先月停まってた東京のトラックって。」
貴「たぶんうちです!」
本当に近いな、と先輩は笑う。
話をしていると時間はあっという間に過ぎ、気づいたら私の家の前。
貴「先輩、ありがとうございました!」
澤「おう!じゃあまたな!!」
貴「はい!また明日!!」
私は小さな門を入り、玄関の前で後ろを振り返る。
先輩の背中はそんなに遠くはない。
でも、少しずつ遠くなっていく背中。
何か、
心臓が
チクチクと
痛い、気がした。