第2章 虹村家の娘 2
ペチペチと頬を叩かれ、目を覚ました。
「あ、形兆」
いつの間にかリビングのソファで寝てしまっていたようだ。
「…飯の時間だ、いつまで寝てる」
時計を見ると、七時半を過ぎていた。
「はぁい」
返事をして上体を起こすが、なぜだか体が重いような気がする。
深く考えずに夕食を取り、食器の後片付けを終えたところだった。
「お風呂入れてある?」
なんとなく聞いてみたのだが、呆れたように返された返事に驚いた。
「はぁ?…シャワーで済ましただろ、一日何回体洗うつもりだ」
「嘘、私シャワー浴びてな…」
そこまで言って、自分がいつの間にか着替えているのに気づき、思い出した。
さっきまで目を合わせて話していたのに、恥ずかしくなって形兆の顔を見ることが出来ない。
「まさかお前…忘れてたのか?」
丁度私が今立っている、冷蔵庫の前で起こった事。
そっと形兆を見ると、イラつきと驚きが混じった顔で、私を見下ろしている。
「ふん、まぁいい…俺はまた出かけるからな」
そう言って部屋をあとにし、弓と矢を手にして家を出て行ってしまった。
形兆があの弓と矢で人を射っているのは知っている。
不死身の父親を殺すためのスタンド使いを探すためにやっているのだと聞いた。
とりあえずの家族とはいえ、部外者の私にどうこう口出しできるものじゃないし、父親のためと言われては止めようとは思えない。
もし私が彼らに出会わずにあの弓と矢を手にしていたら、両親を蘇らせるスタンド使いを探して、形兆と同じことをしていただろうから。
…スタンドを持つのは、幸か不幸か。
形兆はたまにそんなような小難しいことを呟く。
私はスタンドを持っているけど、もし持っていなかったらどうなっていたんだろう。
両親の死に関わってたのだろうか。
…一人の夜は色々と考えてしまう。
私は明日の学校の準備をして、ベッドに入るときつけ目を閉じた。