第3章 虹村家の娘 3
「…君は形兆を殺すつもりだったの?」
「殺されるとこでしたんでね…あんた、仇をとろうってんのかよ?」
質問には応えず、歩兵部隊の一部に攻撃させた。
つんざくような音がして、私の長ランと髪が揺れ、壁に穴が空いた。
弾が男の頬をかすめたのか、赤い線が頬に走っている。
男は反射的に身を引いたが、絶対に逃がしはしない。
「ザ・ハンド」
空間を削り男を引き寄せ、間髪入れずに一斉射撃を開始する。
「クソッ…!?なんなんだコイツッ!!」
「仗助君!」
仗助と呼ばれた男はスタンドで弾をはじきながら、怒声を響かせた。
ザ・ハンドで引き寄せたために反応が遅く、射撃の最初の弾はほぼ命中し、学ランをより赤く染めた。
「許さない…許さない…」
気付くと、繰り返しそう呟いていた。
形兆が死ぬわけ無い。でも死ぬかもしれない。
あんなに血が出てた。どうしよう。どうしよう。
形兆が死んじゃったらどうしよう。
つ、と涙がこぼれ落ちる。
それに反応するようにフッとスタンドが消え去った。
射撃音で鼓膜が破けそうだった部屋が静寂につつまれ、勢いを殺せなかった仗助のスタンドの拳が目前に迫っていた。
視界が勢いよく左に流れ、全身に打ち付けられたような痛みを感じる。
殴られたのかと思ったが、そうではなかった。
ポタ、と顔に血が垂れてきた。
形兆だった。
「何してやがる…死にてぇのか」
瀕死の体で私を押し倒して助けてくれたのだ。
「ッ形兆…!!」
血が止まっていない。止めどなく流れて私の服に、顔に、髪に染みていく。
「東方…仗助、コイツには、コイツにだけは手を出すんじゃあねぇぞッ…!」
そう言って私を残して立ち上がると、弓と矢を手にしてとかべにもたれた。
そして、弓と矢のこと、父のことを話し出した。
私がここに来て初めて聞いた話だ。
「俺や億泰と…コイツは違う。コイツは血が繋がってねぇんだ…だから俺達に…巻き込むわけにはいかねぇんだよ…」
そこまで言って、床に倒れ伏した。
「形兆ッ!!」
「兄貴ィ!!」
いつの間にか現れた億泰と形兆のそばへかけよる。
すると、仗助のスタンドの手が伸びてきた。
驚いて振り向こうとしたが、なんと見る間に形兆の傷が癒えていくではないか。
「…俺のスタンド能力なんだ。傷を癒す能力」
なぜ、と聞く前に答えた。