第4章 火神 大我(黒バス)
「はいはい…」
涙目の火神が少しだけ可愛く見えてしまい、口元が緩んでしまう。
何か…本当に大型犬みたいね。
「ほら、早くして」
苦笑混じりに火神の顔を覗き込もうとすると、ビクリと肩が跳ねていきなり抱き締めて来た。
「うわぁあ…っ!!」
「ちょっ、火神…苦し……ぃ…」
胸元を叩くもののキツく締められてヤバい。
息がしにくくて、苦しくて…
「離し…っ!!」
でも…火神の匂いが間近で匂って、火神の体温が肌で感じられて妙な気分に成る。
チリンチリーン…
自転車のベルの音だろうか?
そのベルの音に怖がり独特の恐怖心を感じたのか、怯えた小さな悲鳴を漏らす。
「うっ…萌…」
半泣きで名前を呼ばれて、もう犬にしか見えなくなってきた。
「と、取り合えずさぁ…離してくれない……?」
無言で首を横に振り、離そうとしない火神を落ち着かせようと優しく宥める。
「さっきのはベルの音だしさ、本物も出て来ないし…怖いなら手を繋いで戻ろう?」
「本当に手を繋いでくれるのか…?」
「うん、だからさ、ほら」
ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる火神の頭を撫でながら微笑む。
「帰ろう?」
手を差し出して火神を立ち上がらせるのを手助けする。