第6章 6
そう言いたいのに、外に出る勇気がない
「…ごめんなさい」
そう言ったと同時にノアの綺麗な瞳から一粒の涙が頬に伝った
最後に絞りだしたノアの言葉はひどく後悔を含んでいて
アンナはいたたまれなくなり、そのまま部屋に戻る
意外だった
冷酷で、いつも無表情なあの人が涙を流すことが
副分隊長という立場で弱さを見せてはいけない
そういう思いがあったのだろう
実際は、誰よりも人の命を大切にし、新兵を気遣い、弱さを見せない心優しい人
この人は、いつか壊れてしまうだろう
そういう脆さを感じた
そんなことがないように、あの人の負担を減らすために
私は強くなる
そして、必ずあの人を守る
アンナは部屋の窓から空を見上げ、そう誓った