第6章 6
下っ端のアンナでさえ忙しかったのだから、幹部ともなると息をつく暇さえないのだろう
「団長も分隊長も来てないよ、食事が遅くなると体に良くないからね…」
本当に心配だよ、ため息を吐いてスープの鍋を弄っている料理人さん
この広い食堂で一人というのも暇で仕方ないのだろう
「ごちそうさまでした、もし会ったら言っておきますね」
幹部組は部屋にこもっているだろうけど、そう思いながらも料理人さんに告げ、食堂を出る
大部屋に戻ると明らかに減った人数に気持ちが重くなる
荷物はそのままで、ついさっきまでそこにいたかのようで
ベッドに潜り込み、眠ろうとするが、なぜかこういう時だけ思い出がどんどん出てくる
あの子とはあんなことしたな、あの子はこんなこと言ってたな
はっきりと思い出せる
「…ごめんなさい」
私のせいで巨人に食われた人は何人いただろうか
分隊長、ベテラン兵士、同期
多くの人が巨人の胃袋へと落ちていった
だが、不思議と涙が出てこない
どこか心の奥底で自分じゃなくて良かったとも思っている
「…最低じゃん」
暗い、シンとした部屋にいるとどんどん気持ちが沈んでいく
今日は眠れそうにない