第6章 6
壁の中へと戻ってきた調査兵団
まっているのは、罵声を浴びせる民衆ばかり
「また兵士が減ってるじゃねぇか」
「調査兵団は壁の外に死にいってるのか?」
「税金の無駄遣いだ」
全ての言葉が心に刺さる
市民に刃物を向けられているような気分だった
思わず下を向き馬の背をみつめる
「顔を上げて」
凛とした落ち着いた声
「調査兵でいることは恥ずかしいことではない
調査を諦めたらこれまでに亡くなった兵士たちの死が無駄になる」
アンナは顔をあげ、ノアの横顔を伺う
何も現さない、堂々とした無表情だった
「私たち調査兵だけが壁の外に行くことを許されている」
前だけを見て、後ろを振り向かない
「私たち調査兵だけが希望を繋ぐことができる」
アンナは思った
「だから、恥ずかしいことなんてなにもない」
この人こそ、理想だ
私はこの人について行く
そう、決めた日だった