第6章 6
飲む気にはなれなかったものの、カップを持ち上げ、匂いを嗅ぐ
ふわりと漂う食欲をそそる香りに無意識のうちに口をつけた
「…おいしい……」
いつもの兵舎で飲むようなものとは違い、味も濃い目だった
食事を終えた兵士に聞いても今日のスープはいつもと同じ味だったという
アンナは手元のカップを見つめ、ノアを目で探す
遠くで忙しなく動き、たまにハンジやミケと眉を寄せて話しているノアが目に入った
まさか、わざわざ?
自分のためにスープを作ってくれた?
ありえない、そう思ったが今日のスープはいつも通りだったということはこの手元にあるスープは夕飯とは別のものということになる
悶々と考えていたアンナだったが、スープの良い香りに負け、飲み干したあと芯から温まった体は睡魔が襲う
ノアに聞かなければならないのに、そう思いながらも慣れないことをした体は言うことを聞かず、深い眠りへと落ちていった
「……ノア、食材を使ったのかい?」
「あぁ」
「団長にバレたら怒られるよ」
「問題ない、バレやしないさ」
なんて会話がノアとハンジの間でされていたことなど、アンナは知る由もない