第5章 5
私とノアは訓練兵からの仲だ
誰よりもノアのことを知っているし、わかっているつもりでいる
みんな訓練に出たのか、ハンジが歩いている兵舎内には人がほとんどいない
ハンジの心の中で引っかかっているのはついさっきのリヴァイのことだ
あれは、どう見てもノアのことを好いている
そしてノアも気になってはいるのだろう
リヴァイの姿が見えると少しホッとしているような嬉しそうな表情をする
ほんのちょっとしか変化がないから、エルヴィンとミケぐらいにしか気づかれていないだろうけど
「ハンジ、なにをしているんだ?」
凛とした透き通る大人っぽい声
この声に呼ばれる名前は特別なものに聞こえる
「…ノア、髪はしっかり乾かさないと風邪を引くよ?」
お風呂を素早く済ませたのか、火照りや蒸気もなく、濡れたままの髪を下ろしていた
そんなノアにハンジは近づき、手に持っていたタオルで髪をわしゃわしゃと拭きだした
10センチほどある身長差で少し幼く見える
「いつも自然乾燥のキミには言われたくないな」
ふふっ、と笑うノア
東洋人の血が入っている彼女はとても繊細で綺麗だ