第5章 5
「そのくらいの長さなら早く乾きそうだね」
キミはリヴァイのことをどう思っている?
ポツリ自分の中で呟く
「あぁ、少し放っておけば乾く」
ハンジは他愛ない話で本心を隠している
だがそれに気づかないほどノアも幼くはない
ハンジが何か言いたいような表情をしていることはわかっている
ただ、自分に都合の悪いことだと思っているし、ハンジはあまり隠し事はしないから聞かれたくないことなのだろう
そう解釈していた
「ハンジ、キミとは出会ってかなりの年数が経つ」
「あぁ、未だにあの時のことが思い出せるよ」
「私もだ。キミはあの時から比べるとかなり成長したな」
「それはノアもだろう?」
「……私はあの日から抜け出せていないさ」
ノアは自分よりも背の高いハンジを見つめ、髪を拭いていた手を掴み優しく下ろした
悲しそうな表情のハンジに気づかないふりをして
「拭いてくれてありがとう」
そう言ってその場から去った
一人残されたハンジ
拳を握りしめ、近くの壁を殴る
「…くそ……」
自分にはどうにもできない苛立ちと悔しさ
眼鏡を外したハンジの瞳にはあの頃の無邪気なノアが思い出される