第11章 11
「つきましたよ」
御者の無機質な声で現実に引き戻され
一歩降りれば風が頬を撫でる
目の前に建つ家は周りのものとなんら変わりはないのに
大きくそびえ立っているかのように見えた
ふぅ、息を吐きコンコンと木の扉をノックする
間も無くしてカチャリと音が響いた
「はぁい、どちらさま?」
ひょこりと開いた扉の間から覗く顔は可愛らしく、癒しを与えてくれる人なのだろうと思った
「調査兵団で分隊長を務めております。
ノア マーティンと申しま…」
「まぁ!あなたがリアムの上司の方ね?まだお若いのに…感心だわぁ」
先日息子を亡くしたとは思えないほど明るい方だ
だが、よく見ると目の下にうっすらとクマができている
化粧で隠しているようだが、それでも見えるということはかなりくっきりついているのだろう
胸が痛くなった