第11章 11
コンコン
返事もしてないのにカチャリと開かれた扉
そこから顔を覗かせるのは言わずもがなわかるだろう
「…ノア?今いいかい?」
「ハンジ、大丈夫だ
仕事全て任せてすまない」
少し良くなっているノアの顔色にハンジはほっと息をはいた
「急で悪いんだけど、リアムのお母さんがノアに家に来て欲しいって…」
「……え」
それは、ノアにとって予想だにしていなかったこと
「なんか、見せたいもの…というよりは見せなければいけないものがあるらしくて」
大丈夫?と心配してくれるハンジ
予想外だったからといって行かないということにはならない
母親が誰よりも後悔や悲壮の念に押し込まれる被害者なのだから
望むことはなんでもするつもりだ
「……大丈夫だ、住所を教えてくれ、行ってくる」
ノアはジャケットに腕を通し
鏡で装いを整えていると、鋭い視線を感じた
それはリヴァイの三白眼から送られるもので
「…すぐ戻ってくるよ」
ふっと笑ったあと、リヴァイの期待していた返事が発せられた
「……待っている」
真剣な瞳
いつも、お前は1人じゃないと言ってくれる声
リヴァイには心の奥底まで見抜かれている気がする
「………あぁ」
自然に頬が緩まるのがわかった