第9章 9
永遠などないこの世界
どちらかがいなくなれば、どちらかは置いていかれる
残酷な世界
調査兵だからこそ感じる死の近さ
そして、死の遠さ
明日死ぬかもしれない、巨人に食われるかもしれない
誰もがそう思う
だが、何年も経ち、上層部の人間になってしまえば
また、助けられなかった
また、生き残ってしまった
また、仲間と人類を天秤に掛けなければならない
…いつ、地獄に堕ちるのだろう
「私は強くなんかない」
リヴァイやミケのように剣にはなれない
エルヴィンやハンジのように盾にはなれない
なら、私にはなにができるのだろう
一人で何百人分もの力があるわけではないし、兵士の希望となる策略を立てれるわけでもない
「私はなぜ、ここにいるんだろうな」
ソファに深く座り、カップを見つめる視線には憂いが帯びる
弱音を吐くノアは珍しい
そう思うと同時に、ミケは弱音を吐けるほどノアから信頼されているということに喜びを感じる