第9章 9
「…後悔しないようにね」
そっと紅茶を一口飲んだハンジ
まだ言いたいことがあったけど、お茶と一緒に飲み込んだように感じる
こんなにも、人のことばかり心配してくれる友人は珍しいと思う
感謝してもしきれない
そんな思いを胸に、紅茶を口にする
「……相変わらず下手だな」
ハンジの淹れた紅茶は折角の香りが消え、少し苦味が増していた
「難しいんだよ、飲めれば問題ない!」
グイッとカップを大きく傾けて一気に飲み干したハンジ
突然の行動に驚くノアだったが苦笑いで追加の紅茶を淹れるハンジの後ろ姿を眺めている
「……ハンジ、巨人の話、してもいいぞ」
「………え」
コポコポとカップにお湯を注いでいるハンジがまん丸く目を見開いてこちらを見ていた
動きが固まり流れ出たままのお湯はカップから溢れ、紅茶がこぼれている
「ハンジ、お湯……」
「いいのかい?」
滅多に巨人の話を聞いてくれる人がいないから
ノアが聞いてくれるというのもかなり珍しい
「あぁ、好きなだけするといい」
にこりと優しく笑うノア
この日の地下室にはハンジの嬉しそうな声が響いていた