第3章 理由はカンタン
乾燥が終わるのを待ってる間、また少し話をした。彼女が淹れてくれたお茶を飲みながら。今度はさっきと違うマグ。
「あ、コーヒーの方が良かったですか?」
「い~え。お茶で。こぼしても色付かないヤツで」
「ふふふ」
「ホントゴメンね、ここ。クリーニング代請求してくれていいから」
「大丈夫ですって、このくらい。普通に洗えば落ちますから」
「そ?じゃ…俺洗濯していくわ。えーと。洗濯板はどこですか?」
「え?ありませんよ、そんなの」
「なんだ~、残念だなぁ~。あったらめっちゃキレ―にしてくのに。こう、おじいさんは川で洗濯を…」
「それ、おばあさんです」
「ひゃっひゃっひゃ!どっちでもいいじゃん!」
「ふふふ」
うん。めちゃ楽しかった。
だけど
「…」
やっぱり気になる。
翔ちゃんと同じタオル
翔ちゃんと同じマグ
翔ちゃんと同じパーカー
これって偶然なの?
これでも、偶然?
もしかして、ふたりは…?
「それで、その時後ろにいたスタッフさんの一人がー…」
「うんうん」
本人に聞けばいいのに、聞けなかった。
なんでだろう。
『うん、実は…』
とか、笑顔で答えられたら…やだったのかもしれない。
あれ。
俺…
もしかして、彼女のこと…?