第11章 魔王様と大学
「ありがとう、大」
「黒月さん、ありがとうございました」
「小春、隼は頼んだ」
「はい」
「隼、小春を困らせるなよ」
「大は酷いな~…僕がいつ小春を困らせたって?」
「いつもだろ…」
私1人の時は電車に乗ったりなんだけど、隼くんが一緒の時は黒月さんが車で大学の近くまで送ってくれる。
隼くんがお坊ちゃんな事。
1人で電車は危険な事。
魔王様1人では何かが起こると心配した榊さんが上京の際に社長さんやマネージャーさんたちに話したそう。
しかし、一歩踏み入れれば隼くんも大学生。
アイドルだと言うことも忘れ、大学内を自由に過ごしていた。
「大学は楽しいね~」
時間が空けば気になったサークルをのぞきに行く。
「始クラスタが集うサークルは無いのかな~?」
「無いと思うけど…」
「残念…」
今日の授業を全て終え、2人で大学を出る。
1人で大学に行く日とは違い、今日はなんだか早く終わってしまった様な気がする。
「早く帰って小春の淹れた紅茶が飲みたいな…」
「分かりました…ふふっ」
「そうだ、ねぇ小春。今日は電車に乗って帰ろうか」
「え?」
「もしもし大?今日は小春と電車に乗って帰るから、迎えはいらないよ」
電話の向こう側で黒月さんが「はあ!?」と、声を上げていた。
隼くんが無事に電車に乗れたのかはまた別のお話。