第9章 魔王様と夏の海
グラビ、プロセラ合同PV撮影はとある島の一角で行われた。
広い海、白い砂浜。
絵に描いたような場所。
大きくて広いコテージは沢山の部屋があり、私の分の部屋まで用意してあった。
「私…付いて来て良かったの?」
撮影に参加する訳ではない。
「はぁ…」
ため息をつき、荷物を整理していると鞄の中に見慣れない包み。
リボンでキチンと包装されていた。
よく見ると一枚のカードが挟まってあった。
『僕の可愛いお姫様へ。魔王様より』
と、直筆で書いてあったメッセージは紛れもない、隼くんからだった。
「隼くんから……何だろ?」
リボンをほどき、中を恐る恐る覗いてみると
「み、水着……」
中に入っていたのは白いビキニだった。
「小春に似合うと思って…買っちゃった」
突然、耳元で囁かれる声の正体
「し…隼くん!」
「この間、海たちとショッピングモールって所にロケに行った時に見つけたんだ。この水着は小春にピッタリだってね…」
隼くんはビキニの上を手に取ると、私に当てた。
「ほらね…あっ…でも………実際に着てみないと分からないのかな?」
「でも、私関係ないし…それに私泳げないよ」
「知ってる。小春、水着は泳ぐ為だけにあるんじゃ無いんだよ…って陽が言ってたんだ。それにほら、僕だって水着に着替えてるし…ね」
確かに今、隼くんは水着に着替え上からパーカーを羽織っていた。
「早くしないと撮影始まっちゃうよ…」
プチプチ…
隼くんは、私の背後から器用にブラウスのボタンを外していた。
「待って…隼くん!」
「え~…待たない」
「隼~!おーい!小春の部屋にいるの…か」
「…………!」
「やあ、海。僕をお呼びかな?」
「あ…いや…な、何でもない」
「海さん、隼さんいました?」
「よ、陽!あ…いた……や、えーっとな…」