第8章 魔王様と愛
ツキノ寮共有ルーム。
「手伝いますよ。小春さん」
「俺も手伝います」
キッチンに立っている私に声を掛けたのは葵くんと夜くん。
「ありがとう。じゃあお願いします」
「「はい」」
グラビ、プロセラメンバーの中でも特に料理が得意な2人は時々私の代わりにキッチンに立って食事を作ってくれる。
「小春さんはいつ頃から料理を始めたんですか?」
葵くんの質問にふと、考えてみる。
「うーん…いつ…いつなんだろう?」
「隼さんと出会う前からですか?」
「隼くんとは生まれてからずっと一緒だから…」
「ええっ!?」
ガタンと、夜くんは洗っていた野菜を落としてしまった。
「小春さん、隼さんといつ出会ったんですか?」
「私ははっきりとした記憶は無いんだけど、私の両親と祖父母たちはみんな隼くんのお家で働いていたから私も小さい時からあの家には居たの」
「じゃあ、物心ついた頃には…」
「隼さんの家にいた…と」
「そう…なるのかな?」
「じゃあ、俺たちの知らない隼さんを沢山知ってるんですね」
「俺たち、気になるけど何だか恐ろしくて聞けないんですよ…」
「そうなんだ…じゃあ、今日は特別に教えてあげますよ。隼くんの事」
隼くんは今日、仕事で夜まで帰ってこない。
「俺も知りたいっス!小春さん!」
いつの間にかキッチンの前には陽くんを始め駆くん、恋くん、郁くんが集まり、他のメンバーもプレイルームに集まっていた。