第8章 免罪体質
俺は立ち上がりトレーニングルームへ向かう。
その後をちょこちょこと如月監視官がついてきていた。
「監視官。」 『狡噛さん…。』
俺と監視官の声が綺麗に重なり、俺は歩を止める。
「なんだ?」 『何ですか?』
「…。」
『……。』
再び声が重なり、2人で黙ったまま見つめ合う…。
まるで、時が止まったような感覚に陥ったが、俺は頭を軽く振ってから言う。
「監視官、先に言え。」
言うと、監視官はおずおずと言葉を紡ぐ。
『…で、では、お言葉に甘えて……。
狡噛さんは"槙島聖護"という男を…どう見ますか?』
訊ねられてから俺は驚いて目を見開く。
「…奇遇だな。俺も同じ質問をしようとしていた。
……監視官は、どうなんだ?」
『し、質問で返しますか……。』
ううむ。と困ったように唸ってから、言葉を探るように考え込んでいる。
それから、そっと自らの言葉を紡ぐ監視官。
……彼女の存在は俺を大きく変えた、と今更ながら思う。
…思えば、彼女が1係に来てから1年という年月が過ぎていた。
『……狡噛さん?聞いてます…?』
そんな事を考えていた所為で、話を全く聞いてなかった。
「……すまない。聞いてなかった……。」
正直に白状すると、監視官はまるで拗ねた子供のように頬を膨らませる。
…可愛いと感じ、少し低い位置にある彼女の頭を撫でる。